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第2回 コンピュータと電気回路

コンピュータと電気回路の関連

今回は、基礎電気回路 I で登場する専門用語と身の回りのコンピュータとの関連と、簡単なコンピュータの回路の歴史について述べます。 電気回路が身近な存在であることとコンピュータや、電気回路がどのようにコンピュータと関連してきたのかを知り、なぜ本講義が設置されているのかを理解することが目的です。

電力量とスマートフォンのバッテリー

スマートフォンの電力量[Wh](バッテリー容量)は、一般的に [mAh] (ミリ・アンペア・アワー)で表されます。これを電力量の視点から考えてみましょう。

たとえば、Google 社の Google Pixel 3 のバッテリー容量は、2915 [mAh] (= 2.915 [A]) です。 これは、2.915 [A] の電流を 1 [hour]、流すことができるという意味です。 もちろん、流す電流が小さければ、その電流を流せる時間は長くなります。 このバッテリーの駆動電圧は、3.85[V] です5

Pixel 3 に搭載されている Qualcomm 社の Snapdragon 845 CPU の駆動電流と電圧を、それぞれ 500[mA] (= 0.5[A]) と 4.2[V] とします6。 (実際は駆動電流と電圧は、ときどき刻々と変化しているので、常にこの数字ではありません。)

Qualcomm社のSnapdragonシリーズ
Qualcomm社のSnapdragonシリーズCPU

Snapdragon 845 CPU と 2.915 [Ah] のバッテリーを搭載した Google Pixel 3 は、バッテリー駆動時間は以下のように計算できます。

  1. バッテリーの電力量[Wh]は、以下になります。

    2.915[Ah]×3.85[V]=11.2[Wh] 2.915 [Ah] \times 3.85 [V] = 11.2 [Wh]

  2. Snapdragon 845 CPU が消費する電力[W]は、以下になります。

    0.5[A]×4.2[V]=2.1[W] 0.5 [A] \times 4.2 [V] = 2.1 [W]

  3. 電力量[Wh]を電力[W]で割ると、5.3 時間となります。

    11.2[Wh]÷2.1[W]=5.3[h] 11.2 [Wh] \div 2.1 [W] = 5.3 [h]

コイルとインダクタンスとリレー式計算機

交流回路の 1 つのポイントに、インダクタンスとキャパシタンスがあります。 それぞれ、インダクタンスはコイルの、キャパシタンスはコンデンサの抵抗値のようなものです。 あまりコンピュータと関係がないと感じるかもしれません。

コイルを用いた電気回路の代表的なものに、リレー回路があります。 リレー回路とは、コイルで発生した電磁気力で鉄片などを動かし、スイッチのオン/オフを行うものです1

リレー回路の構造例1
リレー回路の構造図。出典:リレーの基礎知識 1-1 基礎編 | オムロン電子部品情報サイト, 【リレーの解説】回路、種類等を初心者さん向けに解りやすく説明します - YouTube

リレー回路の例:オムロン社製 MK 小形パワーリレー4
リレー回路の例:オムロン社製 MK 小形パワーリレー。出典:MK 小形パワーリレー/特長 | オムロン制御機器

現代のコンピュータの計算回路 (CPU など) は、トランジスタで構成された電子回路で構成されていますが、1950 年代の後半ころまではリレー(継電器)や真空管を用いた電気回路で構成されていました。 これらのリレー式計算機や真空管式計算機は、大量のリレーや真空管、スイッチ、配線をつなぎ合わせて、全加算器などの計算回路を構成していました。

電球を点けるリレー回路の例
電球を点けるリレー回路の例

たとえば、1956 年に㈱富士通によって開発されたリレー式科学用商用機 FACOM 128A の計算回路には、5000 個のリレーが使われていました。初号機は、文部省統計数理研究所へ納入されています23。 もちろん、計算回路がトランジスタで構成される現代でも、それらに電力を共有する部分には非常に多くのコイルやコンデンサが利用されています。

富士通製 リレー式 科学用商用機 *FACOM 128A*
富士通製リレー式科学用商用機 FACOM 128A。出典:リレー式計算機 FACOM 128A,128B - コンピュータ博物館
60年前のコンピューター、動かし続ける「守人」浜田忠男さん - YouTube

直流回路とCPU

直流回路は、電圧と電流が一定な電源(直流電源)につながれた回路のことで、電気回路でもっとも基礎的な回路の 1 つです。たとえば、リチウムイオン電池は直流電源です。本講義でも最初に取り扱いますし、わかってしまえばそれほど難しくありません。

現在の CPU はトランジスタで構成された論理回路が基本的な要素であり、これは直流回路です。これは、論理回路は 1 か 0 の 2 値ですので、電圧が一定な直流電源の高い電圧を 1 に低い電圧を 0 にする、と決めるだけで良いからです。なお、論理回路については、基礎電気回路 II などで扱う内容になります。

直流回路での 2 値で、1 を 1.5V、0 を 0V とすると決めます。回路の出力が 1.5V か 0V であるとは限らず、1.5V であるべき電圧が 1.45V に低下したり、0V であるべき電圧が 0.5V に上昇することがあります。この値を補正するため、途中に増幅回路などを入れて 1.0V 以上は 1 であるとして 1.5V に昇圧し、0.8V 未満は 0 であるとして 0V に高圧します。このような補正処理を安定的に行うためには、電源電圧が 0V~1.5V の範囲に収まっている、直流電源が都合が良いわけです。

直流電源と交流電源で2値を表現する例。0.8V (灰色の点線) より上であれば1、それより下であれば0とする。
直流電源と交流電源で 2 値を表現する例。0.8V (灰色の点線) より上であれば 1、それより下であれば 0 とする。

余談ですが、交流電源を利用した論理回路(素子)も存在します。1954 年に東京大学の後藤英一氏によって発明されたパラメトロンがその代表的なものです。パラメトロンを論理回路に用いたパラメトロン計算機7は、1950 年代後半に日本国内で盛んに開発されていました。

交流回路と電源

交流回路は、電圧と電流が周期的に変化するような電源(交流電源)につながれた回路のことです。たとえば、家庭のコンセントは単相 2 線 100V の交流電源です。本講義では後半の方に取り扱いますが、複素数を使った正弦波交流の実効値の計算や、コイルやコンデンサのインピーダンス、と言った耳慣れない言葉が頻出するため、注意が必要です。

発電所から変電所を経て一般家庭の100V電源へ。出典:電気が伝わる経路 - 送電のしくみ | 電気事業連合会
発電所から変電所を経て一般家庭の100V電源へ。出典:電気が伝わる経路 - 送電のしくみ | 電気事業連合会

スマートフォンだけでなく、ノート PC からスーパーコンピュータまで、ほとんどの計算機には交流電源が入力となります。たとえば、富士通の商用サーバは単相 3 線 200V の電源8を、スーパーコンピュータ富岳の電源は三相の 200V の電源9を利用して、一般家庭の単相 2 線 100V よりも高い電力効率を実現しています。

コンピュータの回路の歴史

コンピュータの回路は紛れもなく電気回路ですが、その形はこの 50 年で大きく変わってきました。 リレー回路を用いた電気機械式の回路から、真空管を用いた完全な電子回路に代わり、現在のトランジスタを用いた電子回路になっています。

機械式計算機

電気回路が実用化されるまで、計算機の基本要素は歯車などの機械を用いたもので構成されていました。

最古の機械式計算機と考えられているのは、フランスのブレーズ・パスカルが 1643 年に作った計算機パスカリーヌ (Pascaline)です。 パスカルの計算機とも呼ばれており、租税の計算のために作られました。 機能は加算のみで、減算や負の値を直接計算することはできませんでした。

ドイツのゴットフリート・ライプニッツは、四則演算が可能な計算機を 1694 年に製作しました。 この計算機には 2 進法が利用されており、現代のコンピュータに通ずるものがあります。

タイガー計算器は、1923 年に国内で発売された、機械式の卓上型計算器です。 オドネルの計算機と呼ばれる計算機を国産化したもので、電卓が普及するまでの 1960 年ごろまで使われていたようです。

イギリスのチャールス・バベッジは、天文学へ応用するために、自動的に数表を作成する階差機関という歯車式の機械を実現すべく長年にわたり努力しました。 階差機関は、階差法を用いて多項式の数表を作成するもので、対数や三角関数の近似計算も行えたため、国からの援助もありました。 しかし、複雑すぎる歯車の機構や仲違いなどで、完成には至りませんでした。

パスカルの計算機。出典:Wikipedia
パスカルの計算機。出典:機械式計算機 - Wikipedia
How the Pascaline Works - YouTube

ライプニッツの計算機。出典:Wikipedia
ライプニッツの計算機。出典:機械式計算機 - Wikipedia
How It Works: My Mechanical Calculator 2 (Leibniz Calculator) 動作のしくみ - YouTube

タイガー計算器。出典:Wikipedia
タイガー計算器。出典:機械式計算機 - Wikipedia
タイガー計算器で開平計算(完全版) - YouTube

完全動作する階差機関。カリフォルニア州コンピュータ歴史博物館。出典:Wikipedia
完全動作する階差機関。カリフォルニア州コンピュータ歴史博物館。出典:階差機関 - Wikipedia
The Babbage Difference Engine #2 at CHM - YouTube

電気機械式計算機

電気機械式計算機は、大量のリレーや Ma 歯車、スイッチ、配線をつなぎ合わせて、全加算器などの計算回路を構成していました。 機械式計算機よりも高速な計算機を構築するには、自動電話交換機などで実績のあったリレーが利用されました。 これは、1950 年当時は、真空管の信頼度は低く、トランジスタはまだ実用化前だったためです。

リレーを用いた代表的な計算機に、ドイツのコンラッド・ツーゼが 1941 年に開発した、Zuse Z3 があります。 Zuse Z3 は Zuse シリーズの三代目で、機械式計算機であった Z ゼロから、リレー式に構造が変化しています。 四則演算に加えて平方根や浮動小数点の計算ができたい、2 進数を採用したり、プログラムを外部テープ格納したり、と現在の計算機に通じる点が多くありました。

Zuse Z3 のレプリカ(ミュンヘンドイツ博物館)。出典:Wikipedia
Zuse Z3 のレプリカ(ミュンヘンドイツ博物館)。出典:Zuse Z3 - Wikipedia
Die Z3 von Konrad Zuse im Deutschen Museum - YouTube

同時期に、米国のハーバード大学では、1944 年にハ Word・エイケンによって、Harvard Mark I が開発されました。 Harvard Mark I は、紙テープに書かれた制御シーケンスを入力として、モータで連結されたロータリスイッチを動かしていました。 条件分岐命令がないなどの制約がありましたが、加減算は 0.3 秒、乗算は 6 秒、除算は 15.3 秒、対数や三角関数の計算には 1 分以上かかったそうです。

Harvard Mark Iの全体像。出典:コロンビア大学
Harvard Mark I の全体像。出典:コロンビア大学
1944 Computer History: IBM ASCC "Harvard Mark 1" world's largest electro-mechanical calculator - YouTube

日本国内では、電気試験所(現在の産業技術総合研究所)で、駒宮安男や末包良太らによって、1952 年にリレー式コンピュータ ETL Mark I が、1955 年に ETL Mark II が開発されました。 ETL Mark II では、2 進数を用いたり、約 22,000 個のリレー回路が使用されています。

国立科学博物館に展示されているETL Mark IIの操作台。出典:理工電子資料館:ETL-MarkⅡ国立科学博物館に展示されているETL Mark IIのリレーユニット。出典:理工電子資料館:ETL-MarkⅡ
国立科学博物館に展示されている ETL Mark II の操作台とリレーユニット。出典:理工電子資料館:ETL-MarkⅡ
日本初のリレー計算機 ETL-MARKⅡ - YouTube

ETL Mark I の開発に参加していた富士通社は、小型化や信頼性を高めた商用のリレー式計算機 FACOM 100 を 1954 年に商用化しました。 FACOM 100 は、10 進数を用いるなどして、リレー回路の個数を ETL Mark I の 1/5 に削減していました10。 また、実用的な入出力装置が開発され、紙テープ読み取り装置なども開発されました。 FACOM 100 を改良した FACOM 128A と B は、信頼性が大きく向上し、国産旅客機 YS-11 の設計やカメラのレンズの設計などの実用性の高い商用コンピュータとして産業界で広く利用されたそうです3

真空管計算機

リレー回路は、機械式計算機よりも高速でしたが、スイッチの部分が物理的に駆動するため、故障しやすいものでした。 真空管計算機の構成要素は、真空管を用いたスイッチング回路をベースにフリップフロップを大量に組み合わせたものです。 真空管は、真空の管に一対の電極(陰極と陽極)とグリッドを封入し、陰極から陽極への電子の流れをグリッドを介して制御することで、電流や電圧をスイッチングしたり増幅するものです。11

東芝製 の真空管と模式図。出典:真空管 - Wikipedia
三極真空管の模式図。出典:真空管 - Wikipedia
東芝製の真空管の写真と模式図。出典:真空管 - Wikipedia

真空管の具体的な動作は以下のようなものです。

真空管の動作原理。出典:真空管とは | Nutube - ㈱コルグ
真空管の動作原理。出典:真空管とは | Nutube - ㈱コルグ
真空管アンプについて~3極管の原理~ - YouTube

代表的な真空管計算機に、1946 年に完成した ENIAC (Electronic Numerical Integrator and Computer) があります。 ENIAC は、17,468 本の真空管が用いられ、プラグボードとスイッチでプログラムを外部から変更することでいろいろな計算を行える構造でした。 動作クロックは 100KHz で、2 つの 10 桁の数の加算に 20 クロック、乗算は 10 桁×10 桁の場合で毎秒 357 回実行できたそうです。 また、割り算と SQRT は毎秒 35 回実行できそうです。 この計算速度は ENIAC 以前の Harvard Mark I や Zuse Z3 などと比較すると 2 桁かそれ以上速いもので、ENIAC はこの時代のスーパーコンピュータでした12。 ENIAC の消費電力は 150kW と非常に大きく、80kW が真空管に、45kW が直流電源に、20kW が送風機に、5kW がパンチカードなどの補助装置し使用されていたそうです。

ENIACの制御パネル(左)とファンクションテーブル(右)。出典:ENIAC - Wikipedia
ENIAC の制御パネル(左)とファンクションテーブル(右)。出典:ENIAC - Wikipedia
1946 ENIAC Computer History Remastered FULL VERSION First Large Digital Electronic Computer - YouTube

同時期の真空管計算機に、EDVAC があります。 EDVAC は、1949 年 8 月に米国の弾道研究所で運用が開始された。 EDVAC では、2 進法やプログラム内蔵方式の採用など、現代的なコンピュータの特徴を初めて持ったものでした。 プログラム内蔵方式になったことで、データの読み出し速度に制限されることなく計算が回路本来の速度を発揮できました。 なお、加算に 846μ秒、乗算に 2900μ秒かかったそうです。 ENIAC には、約 6,000 本の真空管と約 12,000 個のダイオードが使われ、消費電力は 56 kW でした。

UNIVAC は、現在も続く、商用コンピュータシリーズの名称で、最初の UNIVAC(UNIVAC I)は 1951 年 3 月に完成し、米国国勢調査局に納品されました。 使用した真空管は 5200 本、ダイオードが 10000 本、メモリには 100 本の水銀遅延管を使用されていました。 プログラム内蔵方式で、1 秒間に 10 万回の加算が可能になり、入出力装置には初めて磁気テープが搭載されました。

UNIVAC Iオペレーターコンソールi。出典:UNIVAC I - Wikipedia
UNIVAC I オペレーターコンソール i。出典:UNIVAC I - Wikipedia
Univac I - UNIVersal Automatic Computer I - YouTube

パラメトロン計算機

パラメトロン素子(下面に20個) 出典:パラメトロン素子-コンピュータ博物館
パラメトロン素子(下面に 20 個) 出典:パラメトロン素子-コンピュータ博物館

パラメトロンは、パラメータ励振現象を使用する論理回路素子で、1954 年に東大の後藤英一により発明された。 動作原理は、LC 共振回路の L または C を、共振周波数のほぼ 2 倍の周波数 2f で変動させると、パラメータ励振により周波数 f の振動を励起こされる。 この発振には、0 かπかの 2 つの位相があり、この 2 つの位相を用いて 2 進数を表現していた。

パラメトロンの動作原理とパラメトロン計算機PC-1。出典:パラメトロン計算機PC-1 - 発掘 理学の宝物 - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部

パラメトロンの動作原理とパラメトロン計算機 PC-1。出典:パラメトロン計算機PC-1 - 発掘 理学の宝物 - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部
パラメトロン電子計算機電子工学部系の人なら有名だね!6-3東京理科大学近代科学資料館+東京工科大学intebro - YouTube

パラメトロン素子を用いた論理回路を基本要素として、電気通信研究所の MUSASINO-1 が 1957 年に世界で最初のパラメトロン計算機が稼働したり、東京大学高橋秀俊研究室で 1958 年にパラメトロン計算機 PC-1 が作成された。 MUSASINO-1 は、5400 個のパラメトロンと 519 本の真空管で構成され、加算に 1 ミリ秒、乗算に 6.5 ミリ秒、除算に 26.0 ミリ秒かかったそうです。 安定した連続稼働性能を誇り、土曜午後から月曜朝まで無人でも故障しなかったそうです。

MUSASHINO-1。出典:MUSASINO-1, MUSASINO-1B-コンピュータ博物館
MUSASHINO-1。出典:MUSASINO-1, MUSASINO-1B-コンピュータ博物館

パラメトロンは、真空管に比べ価格が非常に安価であったり、リレー回路と比べて高速に動作したり、真空管や初期のトランジスタと比べ動作が安定しているなどの長所があった。 しかし、当時開発が進んでいたトランジスタに比べると、消費電力が大きく、動作周波数が 100 分の 1 程度であったり、発熱量が大きかった。 そのため、1960 年代ころまでには利用されなくなっている。

トランジスタ計算機

トランジスタは、ベル研究所のジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテン、ウイリアム・ショックレーにより 1948 年に発明されました。 トランジスタについては、基礎電気回路 II で詳しく学びますので、ここでは簡単に説明します。

トランジスタは、npn 形と pnp 形の 2 種類があり、その構造は中央のベース (B)、左側のエミッタ (E)、右側のコレクタ (C)から成ります。 まず、ベース端子を基準として、エミッタ端子とコレクタ端子に 2 種類の電圧を掛けます。 具体的には、エミッタ端子にはマイナスの電圧を、コレクタ端子にはプラスの電圧を掛けます。
すると、ベース端子からエミッタ端子にベース電流と呼ばれる電流が、コレクタ端子からベース端子にコレクタ電流と呼ばれる電流が、それぞれ流れます。

エミッタ端子に掛けた電圧がマイナスの電圧でないときや、コレクタ端子に掛けた電圧がプラスでないときは、電流は流れません。 つまり、エミッタ端子とコレクタ端子の電圧の違いで、コレクタ電流が流れるかどうかを決めることができます。 なお、B,E,C の半導体の厚みや不純物の濃度を調整することで、コレクタ電流やベース電流に流れる電流の大きさを変えることができます。

NPNトランジスタの動作原理。出典:トランジスタの構造と基本特性(1)=バイポーラトランジスタ= | 音声付き電気技術解説講座 | 公益社団法人 日本電気技術者協会 NPN トランジスタの動作原理。出典:トランジスタの構造と基本特性(1)=バイポーラトランジスタ= | 音声付き電気技術解説講座 | 公益社団法人 日本電気技術者協会
トランジスタのしくみ - YouTube

トランジスタは、現在に至るまで小型化と集積化が劇的に進み、情報工学が大きく進展する基礎となっています。

国内では、1956 年に電気試験所で国内初のトランジスタ式計算機 "ETL Mark III"が開発されました14。 ETL Mark III は、プログラム内蔵式トランジスタ計算機で、世界的に見ても初期のものの 1 つでした。 また、Mark III の後継である ETL Mark IV が 1957 年に完成し、これを元に NEC の NEAC-2201 (1958 年)や日立の HITAC 301 (1959 年)が開発されました。

ETL Mark IVの全景とトランジスタ回路のパッケージ。出典: ETL Mark IV トランジスタ式計算機-コンピュータ博物館
ETL Mark IV の全景とトランジスタ回路のパッケージ。出典: ETL Mark IV トランジスタ式計算機-コンピュータ博物館
www.shmj.or.jp/museum2010/exhibi223.html

参考資料

誕生と発展の歴史-コンピュータ博物館

真空管式コンピュータ - Wikipedia

トランジスタ・コンピュータ - Wikipedia

脚注